「聞いて聴いて、早川一光先生のラジオな話!又、来週」第31話
第31話
スタジオ参加が始まってから、早川先生2時間以上、立ちっぱなし。
先生お掛け下さいと言っても
「わしが座る時は、番組が終わる時や」
と病気になるまで、頑張っておられました。
白衣を着て握手をしながら、
スタジオに入るとホワイトボ-ドの前のテ-ブルの上に、聴診器・筆ペンを置きます。
傍らには色紙とハンドマイク。番組進行表と資料があります。
先生、資料を見る時はメガネを頭の上に、喋る時はメガネを下げ、(どっちがどっちかわかりませんが)上げたり下げたりして放送します。
CMや音楽等、先生が絡まない時は色紙に言葉や絵を書いておられます。(スタジオ参加者には、ラジオ体操の様なカ-ドをお渡ししており、参加ごとにハンコを押し15回溜まると表彰。先生アシスタントと表彰者3人で一緒にポラロイド写真を撮り、先生の色紙に添付してお渡しします。)
表彰者が多い時は、先生大忙しです。
おちおち喋っていられません。
先生、スタジオでも講演会の様にホワイトボ-ドに絵や文字を書きながらお話されます。
レギュラ-のミキサ-Nさんがお休みしたことがありました。
彼がいる時は、気を利かしてボ-ドに照明を当ててくれていましたが、その日は初めて担当する人でした。
「慌てないで、私の指示どおりにしたら大丈夫。」
慎重に運行・生放送をしていました。
スタジオはデジタル化対応で綺麗になり、絨毯も一新(スタジオ管理の技術は土足に難色・飲食不可を訴えましたが、制作現場は打ち合わせ等の都合で従来通りとなりました。)
先生には、「Nさんお休みなので、いつもの様に出来ません」と御断りをしていましたが、先生、ホワイトボードの前に立ち、訴える様に私の目をみます。
「高田君、なんでライトがつかないの・・・」
しばらく躊躇していましたが、先生の目に耐えられず、いつもNさんが操作しに行っていた壁に向かいました。(それまで、意識して見たことも触ったこともありませんでした。)
代わりのミキサ-さんは初めての人で、今やっている事で手一杯。
行くとスイッチが2つありました。
それまで触ったことは有りません。
ここまできた以上どっちも照明と思い、トイレのスイッチのような貧素な方を触りました。
するとスタジオは、
真っ暗になり(私の頭は真っ白)、
デジタル調整卓やテレコ等備え付けの機器も電源が落ちました。
そう、何の変哲も無い、無防備なスイッチがスタジオの電源だったのです。
アナログなら、直ぐに機器の電源を入れれば復旧します。
が、間の悪い事にデジタル対応の調整卓は、瞬時に復旧とは行きませんでした。
応援のミキサ-さんも大変です。
彼にとっては想定外。闇討ちにあったみたいです。
デジタル調整卓が、復旧しないと放送が出来ない。
放送中に電源を切る!過去に例を見ない放送事故。
先生をはじめスタジオ参加の皆さんも何が起きたのか分かりません。
慌ててスイッチを入れ直しました。
その間3秒。
しかしデジタル調整卓の復旧に時間がかかり、シロミ(停波)15秒以上で放送事故。
復旧後は、お詫びして放送再開のはず。(動揺して、詳しく覚えていない。)
放送終了後、同時録音のテ-プ(規定で何カ月間保存)を聞いて事故報告を書いて提出。
編成等に報告。
先生のお話中なので、直接CMには影響は無かったと思いますが、何秒何分停波していたか?細かいことは、覚えていません。
事故表には、問題の無防備のスイッチの写真も添付しました。
誰でも触れる所にあり、カバ-もされていない。
スタジオを綺麗にしても大事な所に穴がありました。
事故再発防止のため改善する様、事故表に書いておきました。事故原因は、先生の訴える様な目に動いた私の行動が招いた事故でした。
それにしてもあのスイッチ・・・
どの世界でも、現場に事故はつきものです。誰も起こそうとは思っていません。
でも不幸にも起こしたら、起きたら、嫌でも速やかに報告しなければなりません。
スポンサ-や広告代理店に局の方から、先に伝えなければ信用を失います。
勝手な判断で、2重事故を起こさない注意も必要です。潔さが求められます。
それにしてもあのスイッチ・・・
前代未聞の放送事故、テレビ番組で想像して下さい。
生放送中、スタジオの電気が突然消えて、真っ暗になり音声、映像も消える・・
スタジオにいた皆さん、何が起きたのか分かりません。
勿論早川先生も。後日、Nさん「私が休んだばかりにすいません。」
イイエ、アナログ人間の私にとってあなたは貴重な戦力です。
放送に直接、関係が無いのであなたの好意に甘えていた私に付けが回ってきた。
悪いのは私。いつも支えて下さってありがとう御座いました。
この機会にお礼を!
次回は、事故寸前!金井克子さん他人の関係
又、来週(つづく隔週予定)
*著者紹介
KBS京都「早川一光のばんざい人間」を立ち上げた初代ディレクター
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