「ST,在宅やってるってよ」その76
さて、今回はリハビリ三職種を中心に世間をざわつかせている「訪問看護ステーションにおける看護師と療法士の配置制限」に関して在宅STとして感じる部分を。
そもそもSTが在宅に出てきだしたのはここ最近、依然として病院・施設での従事者が大半を占めています。
そして私自身が訪問分野の都道府県のST研修会を行う中で話を聞いていると
病院からの訪問リハビリSTの多くは兼務が多く、在宅で出会う多様な疾患に対しての不安と兼務業務からの煩雑さで受け身な方が見受けられます。
訪問看護からの看護師の代わりの療法士としての訪問STは訪問一本であること、自身が望んで所属している事からも地域包括ケアや活動と参加などを意識した「在宅メイドなST」になり易い環境にある様にも感じました。(勿論地域差や事業差はあります)
また超高齢社会に置いて入院でのリハビリ実施日数や外来診療の制限、介護保険や地域包括ケアシステムへの移行、という点でも身体麻痺の所謂「プラトー」時期を前提に設定された
最大180日間の入院期間にST分野の障害は回復過程のままであることが多く見受けられます。例えば東京医科学研究所の失語症者の回復推移のデータでは
180日を超えても「コミュニケーションが多い環境」では回復曲線が大きくなるというデータがあります。
退院後、外来も無く、訪問看護ステーションからのST資源が著しく制限されると大きな成長曲線を描く「コミュニケーションが多い環境」を維持し難くなると思われます。
(囲い込みST訓練ではなく、能力の時期毎に出来ること、普段のかかわり方、生活範囲の拡大、自立支援を含めたものであることが保険内在宅STの前提と思いますが)
元々訪問看護ステーションが出来てきた成り立ちとして「医療資源の乏しい地域に医療サービスを提供できる為」、というものがあります。そこからの「リハビリ専門知識が特に必要な人に対し看護師の代わりに療法士が訪問する」という部分から出来た制度です。
STの資格の現状として病院では脳血管疾患や嚥下障害への対応が主となることが多く、
小児や進行性神経難病への対応経験が少なくなりがちです。
兼務での訪問STでの対応のみでは負担が大きく、またマンパワーとしても生活だけでなく、「医療資源としてのST」が減少することは地域の大きな問題であると考えます。
重症ケースに対し、同一事業所内で看護師とSTがいる事で連携できる嚥下アプローチも
まだまだ可能性がある様に感じます。
日々進行していく疾患に対しての食支援、脳卒中からの回復過程で実は食べられるもの、
話せる能力が変化しているのにその時期時期に適した応対が出来る専門職が足りない、
となる可能性があります。
そもそも、現場レベルで療法士と看護師が敵対しあっている事業所はどれだけあるのでしょうか、、、
STが「安心して在宅リハに挑戦したい」と思える社会資源の受け皿としても
訪問看護ステーションからの訪問リハビリは適しているように感じます。
在宅でのリハビリテーションという形が月日を重ねて形成されてきた中で、
今回の改正が通れば、例えば看護師3、PTOTST各1名、という規模の事業所ですら1名療法士を削ることになります。
医療過疎地、リハビリ難民が多い地域では特に深刻な問題です。
もう1点、訪問看護からのリハビリの代わりになり得る代替手段の提案が成されていない
ことも問題です。(出来れば看護師との連携のある訪問看護ステーションの形も残してほしい)
俯瞰的に見ても訪問リハビリステーション等の代替案と共に議題に挙がらないことへの違和感を感じます。神奈川県の黒岩知事の発言は非常に真っ当なものだと思います*
国が掲げたこれからの超高齢社会少子化を乗り切る為の「地域包括ケアシステム」の3枚の大きな葉の一つが萎まない様に、皆様オンライン登録、ご署名お願い致します*
*ご署名はこちらから↓
*黒岩知事の発言
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